えー、大変長らくお待たせいたしました(笑)。2度あることは3度ある、脚本の三谷幸喜です。よろしくお願いいたします。本日はカルロス・ゴーンの会見に先立つこと6時間、ようこそいらっしゃいました(笑)。楽しんでいってください、で、よろしいのでしょうか。よろしくお願いいたします。

 あのー〈鎌倉殿の13人〉、ちょっと新しい大河ドラマを作りたいなってことでプロデュサーの皆さんと話し合いまして、今まで大河でこんなタイトル絶対なかったってものを探そうと試行錯誤しまして、最終的にこの〈鎌倉殿の13人〉というタイトルに落ち着きました。

〈鎌倉殿の13人〉というのはですね、源頼朝という鎌倉幕府を作った将軍がいるんですが、「鎌倉殿」というのは将軍のことですね。で、頼朝が死んだあと、2代目の将軍、彼も鎌倉殿ではあるんですけども、頼家という若者がおりまして、この頼家が2代目ということもあって、「おやじを超えるぞ!」みたいな感じでちょっと頑張りすぎて力が入りすぎちゃって。若かったものですから。それでちょっと暴走してしまう。それを止めるために家臣たちが集まって、これからは合議制ですべてを決めていきます、って決めちゃうんですね。その家臣たちがちょうど13人いて、これが日本の歴史上初めて合議制で政治が動いたという、そういう瞬間なんですけども。ほんとに僕好みの。それが〈鎌倉殿の13人〉。

 えっと、13人の名前、知ってる人あまりいないと思うんですけども、これから覚え方をお教えしたいと思います(笑)。

「ひかわなにお、ほほはあみあみ」です。

 これが全部の13人。13人覚えるのは大変なんですけども、「ほっぺたが網々になってるひかわなにおさん」っていう(笑)。「なにお」っていうのはちょっと強引なんですけども。「ひかわなにお」の名前だけ覚えてれば、全員が分かると。今はほとんど知らない人ばかりだと思いますけど、僕も途中、思いつかなったんですけども。たぶんこのドラマがオンエアされて、その年の暮れぐらいには日本中の人が全員の名前を知っているという、そんな感じになると確信しております。

 この中で一番若かったのが、この北条義時という人です。お父さんが北条時政なんですけども、一番若手の北条義時が最後、この人たち結局パワーゲームというか、みんなで勢力争いしてどんどん脱落し、死んでいくんですけども、最後に残ったのがこの北条義時。この一番若い彼が、最終的に鎌倉幕府を引っ張っていく最高権力者になる。そこまでを今回はドラマで描いていきたいと思っております。これ、試験に出ますから(笑)。

 北条義時が主人公ですね。源頼朝と北条政子という有名な夫婦がいますけども、義時は北条政子の弟になります。

 大体、北条義時ってどのくらい知名度があるか、聞いてみたいんですけども。知ってる人?(数人、手を挙げる) ほーですよ、これが日本の教育ですよ(笑)。これがたぶんね、大河ドラマで日本で一番有名な北条さんになるんじゃないかなと思っております。

 えーと、北条家、北条時政というのがお父さんで、息子がおおざっぱに言うと、宗時がいて、これが有名な北条政子、この政子さんが源頼朝と結婚します。そのことによってもともと北条時政というのは地方の豪族のひとりというか、絶対に歴史に残るような、中央に出てくるような人ではなかったんですけど、娘が頼朝と一緒になったことによって、突然、歴史の表舞台に出てきてしまった、駆り出されてしまったという、そういう状態になっています。

 おもしろいのは、主人公は義時なんですけども、頼朝が挙兵したときに北条家も一緒になって平氏と戦うんですけども、その時に一番頼りになっていたお兄さんの宗時っていうのが、戦で死んでしまうんですね。それによって本来、北条家の中心になるべき人じゃなかった、この義時って青年が、歴史の表舞台に駆り出されてしまって、時政と共に頼朝をサポートして鎌倉幕府をつくるというふうになっていきます。

 これが、何かに似てるなって思ったんですけども、『ゴッドファーザー』という映画がありまして。『ゴッドファーザー』で言うところのマイケル・コルレオーネ、アル・パチーノですね、その設定とすごく似てる。マイケルのお兄さんのソニーが殺されて、やむなくマイケルがマフィアを継いでいくという。たぶんあのゴッドファーザーの原作者のマリオ・プーゾは、鎌倉時代のこれに影響されて(笑)つくったんじゃないかなと思います。

 それくらい、言っときますが、ほんとに僕、この仕事を引き受けてよかったと思うのは、この時代っておもしろいんですよね。おもしろいドラマ、おもしろい物語の要素が全部詰め込まれてる。ほんと『ゴッドファーザー』だと思うし、この北条時政には、牧の方という後妻がいて、この人が悪知恵をどんどん時政に入れ知恵して、たきつけて、時政はどんどん悪い奴になっていくんですけども。これがほんとに『マクベス』みたいで、たぶんシェイクスピアはこの時代のことを知って(笑)、『マクベス』を書いたんじゃないかなという。

 もっと言うと、このお父さんがいて、娘がいて、弟がいて、婿がいる。これも何かに似てるなと思ったら『サザエさん』なんです(笑)。間違いなく長谷川町子さんは、このことを知って書いたんじゃないかという。ここにちゃんと頼家、実朝という子どももいますので。タラちゃんですね(笑)。『サザエさん』 でいうと、これ(頼朝)マスオさんですが、サザエさん(政子)とカツオ(義時)が手を組んで、マスオさんが死んだあとに波平(時政)を磯野家から追い出すんですね。そう考えるとものすごいドラマがある。しかも、そのあとタラちゃんも義時が滅ぼしてしまう。で、フグ田家が滅亡して、磯野家の鎌倉時代ができるわけです(笑)。

 それくらいすごくドラマティックな、ちょっと僕の頭では想像がつかないようなすごいドラマが鎌倉時代に展開していて、それをドラマにすることができて、僕は本当に脚本家冥利に尽きると思っております。ではマイクをお返します。