田 中 偉 登

5つの質問

― “朝ドラ”〈エール〉からのオファーを受けたときの気持ちは?
「以前から“朝ドラ”のオーディションを受け続けていたので、『まさか! 本当に?』というのが正直な気持ちだったんですが、『どんな役だろう、どんなストーリーだろう』と、いろいろ想像してワクワクしました。同時に、幅広い年齢層の皆さんが一日の始まりに見るのだから、責任重大だな、と不安な気持ちにもなりました。自分の役柄を聞いてからは、なじみのない福島ことばを使うこと、呉服屋という仕事のことなど初めてだらけで、さらに不安は募って(苦笑)。クランクインまで福島ことばのデモテープを聞いてセリフを練習したり、反物を巻く練習をしたりと、ひたすら練習の日々でした。撮影が始まってからは、そうそうたる共演者の方々を前に『負けるもんか、僕も目立ちたい!』という熱も湧いてきたので、不安を燃料に変えながら必死に食らいついていました。そんな中、どんな演技でも受け止めてくださる皆さんの姿を目の当たりにして、『僕はまだまだ。より頑張っていかないと』とエネルギーをもらう現場でもありました」

― 俳優としての課題は?
「『言葉の重み』ですね。〈エール〉で共演させていただいた唐沢寿明さんや窪田正孝さんをはじめとする先輩方の言葉は、僕が発するセリフより“重み”を感じるし、聞いていてとても心地よいんです。それは今まで努力されてきた人生や、さまざまな経験があってこその重み。ただ重くしようと思っても、なかなか“重み”は出ないんです。今すぐにできることではないですが、この先たくさん場数を踏んで、見る人の心に響くようなセリフを届けられるようになりたいです」

― 絵馬に書いた「人の人生に触れる芝居をできますように」には、どんな思いが?
「これが、まさに僕の仕事のテーマです。誰かの人生を、代わりに演じるのが役者。そういう意味でも“人の人生に触れる”仕事だし、僕の芝居を見て俳優になりたいとか、もしかしたら呉服屋さんになりたいとか思う人も出てくるかもしれない。だからこそ、役者は誰かの人生に直接触れていく仕事なんだなと思っています。たとえば、人の人生がギターの弦だとしたら、僕ら役者の使命は、その弦に触れて震わせること。生きている人の数だけ弦があって、僕がいろんな役を思いっきり演じれば演じるほど、より多くの人の弦を強く震わせることができるはずだと。不器用な僕だけど、お芝居でたくさんの人の心を震わせることが誰かの原動力につながればいいなと思って、この仕事を続けています」

― 趣味は料理と聞きましたが、最近作ったメニューは?
「餃子ですね(笑)。田中家には昔から、ものすごい数の餃子を作って白いご飯と餃子だけを食べるという、とてもシンプルな餃子パーティーがあるんです。こだわりは刻んだニラをたくさん入れてニラの香りをしっかり出すこと。タレはショウガ醤油が定番です。実家にいたときは、みんなで黙々と餃子を包んでいたので思い出深い料理です。写真映えするような凝った料理ではなく、ありもので簡単にパパッと作るようなものばかりなので、プロフィールを『趣味は男飯』と書き換えた方がいいかな(笑)」

― 最近フィーバーしていることは?
「小説を書いたり、脚本を書いたり、歌の詞を書いたりと、言葉を使っていろんな方法で自分の思いを表現することにハマっています。先ほども言いましたが、役者にとって言葉は必要不可欠なツール。でも、なかなか真剣に言葉と向き合う時間が取れず、『本当にこの言葉で合っているかな?』と、自分の発する言葉に自信が持てない時期もあったんです。先日までの外出自粛期間は家で過ごす時間がたくさんあったので、小説やラジオなど言葉に特化した方法でインプットし、自分なりの方法でアウトプットしながら言葉の解釈を広げるいい期間になりました。これだと思うものができたら、いつか皆さんにいろいろなカタチで発表できたらいいですね」

[本誌7/24号より]