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NHK杯全国高校放送コンテスト

校内放送指導者講座 報告



平成20年12月26日(金)、27日(土)の2日間、東京の千代田放送会館で、全国放送教育研究会連盟・日本放送協会主催、日本放送教育協会共催による「第31回校内放送指導者講座」が開かれました。全国から110名の先生が参加され各講座で熱心な研修が行われました。


■目的

高等学校における校内放送活動の意義と役割を確かめ、その指導についての諸課題を究明するとともに、具体的な指導の充実を図ります。


■対象

(1) 放送部(委員会)の指導にあたる者。
(2) 各都道府県コンテスト担当者および放送コンテストの審査にあたる者。


■講座一覧

以下は講座ごとの概要です。


■講座ごとの内容(概要)


講座1 顧問交流「放送部顧問として」

参加の先生方が11~12人の10班に分かれて、日頃の活動報告や指導法の悩みやヒントを出し合いました。各班はベテランの先生と中堅の先生と新人の先生が含まれるよう班分けされています。


アナウンス・朗読の練習については、3人ずつグループを作って技術、文章のまとめ方のレベルアップを図っている/朗読の感情移入と演劇調の境目が難しい/自分が気持ちよく読むだけではだめで、伝えたいことや感動をきちっと伝えることが大切なので、他の人に聞いてもらうという練習をしている/ういろう売りとか早口ことばは、生徒同士で競ったりする楽しさがあり、ちゃんと練習していないと出来ないので、入学した1年生に聞かせると非常に有効/滑舌は自分でも把握できるけれども、発声は自分だけではわからない部分があるので、しっかり指導していかなければならない


お昼の放送については、ずっとやっていない学校が始める方法としては、部活紹介などから始め、他の先生方も取り込んだ形で、学校の事を知らせるような中身で充実させていけばよいのではないか/すでに定着している学校では、前日にある程度の所を作って聞いておいてから、次の日に放送するというような形をとると一層充実するのでは


取材に関しては、初めからうまくいくわけではなく、アポ取りの時点から失敗を繰り返すこともある。その失敗を通して生徒がどんどん成長していくのではないか/最初は用意した質問に答えてもらうだけで精一杯だったのが、インタビューでだんだん話をしていく中でより深い話を答えてもらえるようになる


校外の活動としては、福祉協会の司会や地域の放送に参加


放送部の校内での市民権については、学校紹介や文化祭体育祭など校内の中で活動していくということが大事/コンテストもありますが文化部というのは校内でどれだけアピールできるか、他の生徒にも目を向けてもらうことが大事であり、入部にもつながる/他の部活動を取材して高校総体ビデオを作ったり、野球の大会などでのアナウンス、作品を作る中での演劇部との連携など、他の部活動との協力/放送部員の活動を、顧問が担任の先生などに伝えていくことも大事


先輩の引退に伴って、練習とか技術がそこで途切れてしまうという問題については、先輩が修学旅行に行くときの留守をしっかり守ることがテストになる/1月に校内合宿をして、進路の決まった3年生とか卒業生に来てもらって校内研修の場を作っている


顧問としてこれでよいという指導法はない、私たちが一生懸命やり続ける事が唯一の方法/部活に顔を出し、出来る限り生徒たちとともに時間を過ごしていくことが大事/技術指導が出来ない顧問であっても生徒と一緒に顧問も勉強していく姿勢が、生徒の成長にもつながるし、顧問も成長につながる/やる気の生徒が一人いることによって部が大きく変わる、そんな生徒を見つけだし、育てていくという事も大事/一人一人のレベルは違うので、個別に課題を設定/ダメ出しをするときに、どこがダメだったかは生徒自身に答えを見いださせるとよい


経験を積む場、発表する場を用意する。発表したあとに評価をし、それをサイクルとして繰り返すことによってお互いが成長していくことが大事。そのようなことをネタ帳のようにまとめておくと、先輩から後輩に教えていくことにつながる。


その他、生徒にいろんな刺激を与えるためには、顧問同士の交流、研鑽をしっかり/ブロック大会などで特にベテランが新しい先生を育てていく姿勢も大事/県によっては、Nコンと文化祭以外に1月もしくは9月10月くらいに新人大会、研修会を行っていて、地区全体、県全体が伸びている


自分一人で解決しなければならないと思うと大変である、「他校の先生がこんな事言っていたよ」、常連校、入賞校の事例を持ってきたり、「研修会で聞いてきたんだけれど」というような持ちかけ方もある


このような話題の中、放送部の顧問とはいっても、教科指導、クラス指導と同じで、一生懸命な生徒を褒め、達成できた生徒たちが、「自分はここまで成長したんだ」ということがわかって卒業していってくれたらそれでいいのではないかという意見が投げかけられました。


講座2 実践発表「毎日、放送する」

講師 岩手県立盛岡第一高等学校 菊池 達哉

全国大会でも大活躍の盛岡一高ですが、今回は「お昼の放送」に絞ってのお話しでした。


新入生に入学後7週間で、応援団が校歌と応援歌を教え込み、体育祭を通して新入生を一高生に変えていくという学校紹介ビデオから始まり、途中、卒業生3人による「お昼の放送」の実演も含めての発表でした。


毎日お昼の放送をするとだいたいの問題は解決するのではないか。1日あたり17.4分のお昼の放送を、今年は172回やる見通しです。そうすると1年間に50時間。これを始めたのは2001年、私が盛岡一高に転勤して、毎日お昼の放送をやればコンテストは通ると思ったんです。毎日本番を経験させたらば、だいたい毎年全国大会に行ける。


今日の結論:毎日やれば、たいていのことはできる


昨年度の指導者講座の宇治橋祐之さんがおはなしになったことですが、「番組というのは調べてまとめて伝える活動だ」そのあとに付け足して、「伝わることで動かす」を座右の銘にしています。


お昼の放送で、どういうことを流しているかといいますと、一番多いのは部活動の大会の結果です。シーズンになりますと毎週、たくさんの部活が大会や練習試合に行きます、そこにはニュースが一杯あります。


みんなで手分けして取材にいきます。毎週月曜日、お昼の放送の後にミーティングをしています。


行事や各部の活動の日付と場所をリストにして、「誰がどこ取材にいくの?」と分担を相談します。最近は立候補で埋まります。立候補で埋まればしめたものです、取材の対象というのはできるだけ自分で決めさせたいと思っています、自分で決めたことはやります。取材のピークは月曜日です、たいていこういう行事は土日にあるので、このミーティングが終わると蜘蛛の子を散らすように色々なところに取に行くわけです


1年生も取材に行かせます。6月くらいまでは2年生3年生と一緒に行って、話しを聞いているのを見て覚えるんですけれど、独り立ちしたばっかりの頃は失敗をしてきますね。大会の結果、いつあったの、どこでやったの、結果どうだったの、一つのことを伝えるには要素があります、最初はそれがつかめなくて失敗しますね。


次の段階になりますと、誰がどういう活躍をしたのか、どんな試合経過だったか、次はいつどんな試合になるのか、いろいろ調べてきた中で何がニュースなのかということを書けるようにします。最初は私がいじめ役だったのですが、最近はまず先輩がいじめてくれますね。大会に出たのは生徒です。


また、初めのうちは教室で話を聞いているんですけれど、だんだん部活の場所に行って聞いた方がいいということがわかります。もっと欲が出てくると大会に行くようになります。大会に行ってその場で見ると「あっ」て思うことがあります、あって思うことが大事です。そういうのがないとおもしろい原稿になりません、おもしろい原稿じゃないとお昼の放送はできません。


「雑談力」ということばを、文化放送のアナウンサーだった梶原茂さんのコラムで見つけたのですが、取材に行きますと慣れないと手っ取り早く結論だけもらいたいと思ってしまうのですが、取材というのはいい雑談ができたご褒美として本当の話が聞けるんだということです。また、雑談が出来る子というのは、次また取材に来たときに結構歓迎してもらえるものです。


生徒が調べて書いた原稿をメールで僕に送ってもらっています。僕が実際に流す原稿にしていきます。一つの題材はだいたい1分半ぐらいで抑えたいな、これNコンと一緒です。


どのニュースをいつ流すかは僕が決めています。どれをどの日に放送するのかを決めるのはとっても楽しいことなので私がやっています。だいたい月曜日のうちに揃います。今1,2年の放送委員が11人います。一つずつ原稿を書いてくると11本になります。1日2つニュースになりますね、そしたら結構な量です。2つのニュースに最初にあいさつ入れて後ろに天気予報入れたらもう10分くらいになります。


今日どれを流すかは、私がその日の午前中の空き時間に、1時間でやるって決めています。その日の朝になって今日の行事だとか新しい情報が入ってくるときがありますから、それも織り交ぜて1時間で作って印刷して放送に間に合わせるという毎日です。


お昼の放送を毎日やるとどうなるのでしょうか。


放送委員は、題材探しをしていく中で、放送委員の自覚が芽生え、視野が広がります。たまには、こわい先生や友だちからもたまに褒めてもらって、高校生なりのプロ意識が芽生えた。地域のイベントにも参加できた。学校の中でみんなから知られる存在であると同時に、学校中の人を知ることができた。


放送委員以外の一般の生徒は、ニュースの中で生徒の名前が紹介されますから、普段はめだたない生徒が、教室の中で主役になったりします。また、毎日の放送が生徒の日常となり、逆に流れてないと違和感を感じるようになっています。


学校は、それぞれ部活は一生懸命やっているのですが、他の部の活動はなかなかわかりません。お昼の放送により、お互いが見渡せるようになり、隙間がなくなると学校全体に一体感が出てきます。


また、盛岡一高のNコンのアナウンスや番組、ドラマは、お昼の放送で得た取材から発展させて作っています。コンテストで入賞することは、活動のバネになります。また、題材が「お昼の放送」でみんなが知っているので、帰ってからも学校全体が喜んでくれます。


講座3 「古典作品の朗読」

講師 アナウンサー・千葉市女性センター名誉館長 加賀美 幸子

『源氏物語』千年紀にちなんださまざまなイベント・放送・出版でご多忙の中、今回も古典作品の朗読について加賀美アナウンサーにご指導いただきました。加賀美さんは、少女時代、『更級日記』の作者のように『源氏物語』など古典への憧れを抱いていたことから、アナウンサーになって古典に取り組む機会を多く与えられて精進され、今があるという、ご自身の「古典と向き合ってきた過程」から話を起こされました。


古典は宝物ですが、敬して遠ざけてしまうのではなく、「楽しく読む」ことでそれを宝として生かしてくださいと、加賀美さんは力を込めて話されました。古典の原文朗読にハウツーがあるとすれば、それは読み方のテクニックではなくて、楽しく読む・近しく読むことによって、作品の息づかいを感じ取り、その作品の息に自分の息を合わせていくことです。そもそも古典の文章は、紙が貴重だったため声に出して読み楽しんだものであり、言葉の響きが「心」を伝えるものでした。原文朗読は、その「響き」を大事にして言葉を声にしていくところに価値があり、楽しさがあります。現代語訳は訳文を著した人の世界であって、訳で読むと読み落としがちな言葉の奥にある作者の考えも、原文に向かい合うことによって濃く鮮やかになります。古典の朗読には特別な読み方があるわけではなく、原文の響きに寄り添い、その息づかいを声にすることが、自然に、作品の心を伝えてくれます。こういったお話を、さまざまな古典作品の魅力にふれながら、また、『源氏物語』の幾つかの場面の原文朗読を実演しながら語ってくださいました。


講座の終わりに、55大会の朗読部門準決勝で古典(『源氏物語』「桐壺」の巻)を発表した4人の出場者の朗読を会場で聞いて、加賀美さんにコメントしていただきました。加賀美さんはどの朗読も上手であると評価されたうえで、「言葉を流れさせないよう、ゆっくりと」「切り切らず(息は切るが意味は続いている)を使いこなせるように」「上手にすらすら読みすぎると、かえって意味が逃げてしまう」「うたう読みにならないよう、自然に」など、具体的な指導や審査のポイントを示してくださいました。


会場からの質問でもあった「読みの速さ」については、ただ「ゆっくり」ではなく「心を深く」「響きを伝える」読みを心がければ、自然とその作品の息づかいに沿った適切な速さになっていく、と重ねて話されました。発音やアクセントなどは表現を支える根底の要素としてきちんと身につけ、その上で文章の息づかいを我がものとしてもらいたい。響きが6、意味は4であるという日本語の言葉の美しさを生かせるよう、原文に向かい合うときには、意味の解釈に傾きすぎないでもらいたい。こういったアドバイスは、実際に加賀美さんがどう読まれるかを聞くことによって、大変説得力のあるものとなりました。


講座4 「高校生とドラマ」

講師 脚本家・作家 竹内 日出男

「先生の役割は、皆をやる気にさせる『プロデューサー』。生徒たちのアイデアをどんどん取り入れて交通整理をして、チームの力を100%出させてください。『作るのは君達』先生は子供の個性や生き生きとした発想を殺さないで鼓舞してあげてほしい。」


今年の決勝大会で審査をしてくださった脚本家・作家の竹内先生に「高校生とドラマ」というテーマで45分のお話を伺いました。


審査していただいた作品の感想から、生徒達の発想の豊かさに感動されたこと。生徒達は作品作りを通して成長していることなど、番組作りの意義をお話ししてくださいました。その他、先生のお仕事のことから、台本作りやマイクの使い方など、具体的なお話しもいただき、アッという間の45分でした。


今年は『序曲』。早く、この続きを伺いたいものです。


講座5 「高校生のアナウンス・朗読 -どう指導するか-」

講師 NHKアナウンス室次長 渡部 英美
NHK放送研修センター・日本語センター チーフアナウンサー 中川 富雄

今回は、NHKアナウンス室からお二人をお招きしてお話を伺い、模擬審査も行いながら指導や審査の視点を様々な角度から研修しました。


まず、最初に30分ほど、高校生にどう指導するかということを具体的に話して頂きました。アナウンスについては、生徒が自分でニュースをどれだけつかまえることができるかが大事であるということが力説されました。そのために普段の心がけが大事であること、学校の中での発見を、ワクワクして取材を、ということが話されました。そして、指導者は生徒のオリジナリティーを大切にしてほしい、大人の視点や表現で原稿をつまらないものにしないでほしいということも指摘がありました。


また、アナウンス・朗読ともに、誰に向かって話すのかというベクトルを大事にしてほしいということが言われました。放送と言っても、1対多数ではなく、1体1の方向性を持つべきとのことでした。


模擬審査では、55大会の準決勝でのアナウンス・朗読2名ずつの発表を聴き、審査採点を行いました。講評を聞き、講師の審査点数と大会時の審査点数を比較しながら、その採点のポイントについて説明がありました。


アナウンスでは、原稿内容として、高校生のニュースは高校生の共感を呼ぶ内容であってほしいということ、学校を社会へどうつなげるかという視点が大事であること、取材の方向と具体性を考えてほしいということが挙げられました。


朗読では、聴き手を考えて、ベクトルを考えて読んでほしいということでした。聴き手への「ホスピタリティ」という言葉も出てきました。


滑舌練習の関連では「楽しい話をする時、滑舌はよくなる。」とも言われました。だから、指導者は「楽しく話させてほしい」とも。


原稿の作り方から滑舌練習、発声練習まで実に様々なことが話題にされ、あっという間の140分でした。指導に資する番組としてNHK第二放送の「ことば力アップ」の講座も紹介されました。5月6月には高校放送コンテストのことも取り上げられています。テキストも含めて今後の参考にできると思います。


講座6 「ラジオ・ドキュメント審査講習」

講師 NHK制作局第一制作センター学校教育番組部 チーフプロデューサー 市谷 壮

今回はラジオ・ドキュメントの審査講習を行いました。55回大会準決勝進出した6作品を聴取、各自審査をして集計を行いました。また、班別に討議して各班の1,2位を決定、その選考理由とともに発表し、55回大会の実際の採点の平均点、今回の指導者講座参加者の採点の平均点、講師の審査結果を比較して、審査の観点・得点にかなり相違があるということを確認しました。その上で講師がどのように審査をしたか、解説をしていただきました。


講師 市谷氏の「審査の観点」


  1. 市谷自身が何らかの意味で楽しめたか。
  2. 想定した聴取者(高校生)が興味を持つテーマ。内容であるか。
  3. 想定した聴取者と向き合いそこに向かって伝えたいという気持ちが表現されているか。
  4. 聴きやすい作品に仕上げるスキルがあるか。

以上のような観点から、6作品にどのような得点を与えていったか個々に説明をいただきました。以下は講評のエッセンスです。


  • 作品の審査は絶対評価はできず、結局相対評価になってしまう。
  • 一番最初に聴く作品に何点をつけるかが難しいが実質的に基準になる。
  • 障害・生死など重いテーマを扱った作品はチャレンジした努力は分かるが、ステレオタイプなまとめ方になってしまう傾向がある。
  • コンテストのための作品なのか、同世代の高校生が学校の昼の放送として聴いて面白い作品であるのか、想定をする必要がある。
  • インタビューに偏りがちな作品は良くない。ラジオ番組なのだから現場音・音声を大事にしてほしい。

このような講師の講評を伺った後、質疑応答を行いました。


質疑1「55回大会、今回の会場の審査結果と専門審査員との審査結果には乖離があり、県予選・本大会でも教員審査員の得点は軽くなり、専門審査員の審査結果で決定してしまうように思う。無力感を感じる。」


回答「制作を担当している専門審査員は想定の100点からどれだけマイナスするか、という視点で審査をすると思う。教員審査員の審査結果に不均衡があるのならば、集計の方法を改善するなど運営上の努力が必要だと思う。」


質疑2「NHKで番組制作をする際、著作権はどこまで処理するのか。」


回答「ほとんど全てつきつめて著作権処理を行う。処理できないものは使わないのが原則。」


質疑3「障害や死など重いテーマを扱った作品がステレオタイプだということで評価が高くなかったが、その点についてもう少し説明をしてほしい。」


回答「障害者が頑張っている、命は大事、というのはある意味当たり前の取り上げ方になるので、これを打ち破る何かがほしい。なんでこの番組を制作するのか、という視点があるとよい。」


それに対して、
「制作側にステレオタイプはいけない、という思いこみがあるのではないか、高校生が素材の素材としての感動を紹介することも必要なのではないか。」という会場からの意見もありました。


以上のように審査の観点はいろいろあり、審査の精度を上げるためには審査基準自体を検討する必要があることも示唆されました。


講座7 「ラジオ・ドキュメント制作講習」

講師 NHK制作局第一制作センター学校教育番組部 チーフプロデューサー 市谷 壮

ラジオ・ドキュメント作品の制作に当たって必要な心構え、アプローチの方法を実践的に解説していただきました。ラジオ・ドキュメントのお手本になるものが実際のラジオ放送からほとんどなくなってしまった現在、どのような点に気をつけて作品を制作すればよいのか、番組に内在する特性についてポイントを絞り、会場の参加者とやりとりをしながら説明をしていただきました。


◎ラジオ・ドキュメント作品を制作する上でのポイント


Ⅰ「ラジオ」の特性とは?
音声で伝える。

(1)映像がない。

  • 聴く人に集中を要求する。
  • →集中を持続させる「しかけ」。
  • 聴く人の想像力に委ねる。
  • →イメージを喚起する工夫。
  • 言葉と音だけで伝える。
  • →抜け落ちている情報はないか?

(2)頭から順番に聴く。

  • 聴く人は情報の順番を選べない。
  • →「わかりやすい」順番(構成)。
  • ある程度行き先が分からないと聴いていられない。
  • →予想と意外性のバランス。

(3)たいてい一度しか聴かない。

  • 一発で分からせる。
  • →平易な単文を積み上げる文章術。
  • すべてを集中して聴くわけではない。
  • →重要な情報は時間をおいて繰り返す。
  • 印象の強い部分しか記憶に残らない。
  • →メリハリのある演出。

(4)言葉+言葉以外の音だけで成り立つ。

  • 言葉(ナレーション・セリフ・朗読・インタビュー・会話・歌詞)
  • →説明・意図・論理を伝える。
  • 言葉以外の音(現場音・効果音・音楽)
  • →状況やイメージを喚起する。
  • 現場音―意識的に現場の音を録ってくる。
  • 効果音―意外な音源で自作できることがある。(面白さ)
  • 音楽 ―印象が強いのでクスリにも毒にもなる。(慎重に)
  • *重層的な音作りを心がける。
  • →言葉と言葉以外の音を重ねる。「足し算」の効果。
  • →重要な主張だけを際だたせる。「引き算」の効果。
  • *録音と編集のポイント。
  • 録音は撮影よりも難しい。音声レベル・雑音などに対する配慮。
  • 録音スタイル ICレコーダーで録音、PCで編集が主流へ。
  • 場数とフィードバック(多くの人に聴いてもらう)でスキルアップを。

Ⅱ「ドキュメント」の特性とは?

  • 当事者が登場する。
  • →インタビュー、モノローグ等
  • (事件、テーマの当事者・歴史的な題材ならそれについて知識のある人など)
  • (ドキュメントとドラマの制作を比較しても、扱うテーマ・目的・制作の段取り等それほど違いはない。演出手法が少し違うだけ)
  • ドキュメントのコツ
  • →当事者の肉声があること。
  • →現場の空気感=本物ならではの説得力が生まれる。

Ⅲ番組制作の際の共通のポイントとは?

  1. 「だれに」「何を」伝えるのか。
  2. 「どのように」伝えたら伝えたいことが伝わるのか。

Ⅳ制作の手順(考え方の順序)

(1)聴く人は誰か、どんな状況で聴くのか、を想定する。

(2)その人に何を伝えるか。

  • →手持ちのメッセージはたいてい使えないので新たに取材する。
  • →情報≒意外性 これによって聴く人の関心を導く。

(3)どんな風に伝えるか。

  • →制作上の工夫が必要になる。
  • 「構成」の考え方。
  • 起=びっくりさせる。
  • 承=「びっくり」に至るあらすじ
  • 転=「びっくり」についての内容を描く。
  • 結=有ってもなくてもよい。
  • *「構成」については制作者それぞれの流儀がある。自分の流儀を手に入れればよい。
  • 聴く人を楽しませることを念頭におく。
  • →自分自身のスキルアップ-フィードバック(多くの人に聴いてもらう)
  • →発表の場をたくさんもうけるべき。

以上のように番組の制作者が考えていること、気をつけていることを整理して講習を行っていただきました。

解説後、「どのようなラジオ・ドキュメント作品がよいと思うか。」という質問があり、講師市谷氏は「音がめまぐるしく変化するような作品が面白いのではないでしょうか。」とやはりラジオの特性を重視した回答をなさっていました。

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